嗚呼、悲しき大阪のおっさんの性 in 九州。

先日、所用で福岡に行ったときのこと。太宰府天満宮を訪れ、身内の学業祈願を行った後、境内をぐるぐると散歩した。

参拝後、まだ時間もあり小腹も空いていたので、太宰府天満宮の参道にあるレトロな喫茶店へ立ち寄ることにした。

実は7年ほど前にも訪れたことがあるお店で、当時もレトロな雰囲気と美味しいコーヒーを堪能した記憶があり、今回、久しぶりに来るのを楽しみにしていたのだ。

いざ入店。入口左側のテーブルに案内されて席に座り、ブレンドコーヒーとたまごサンドのセットを注文。

店内はLEDではない昔ながらの薄明かりの電球と、こげ茶色を基調としたアンティーク家具がレトロな雰囲気を醸し出しており、なんともたまらない。

喫茶店なので私より人生の先輩方が多くいるかと思いきや、私が案内された席の向かいには若い女性の2人組が座っているだけで、店内には静かでゆったりとした空気が流れていた。

朝早く起きて福岡に来たこともあり、少し眠たかったので、目を閉じて何も考えず、ただ店内の雰囲気に浸りながら、コーヒーとたまごサンドの到着を待つことに。

すると、五、六十代くらいの夫婦らしき二人が入店してきて、私の席の二つ隣に案内された。二人がメニューを見ながら注文を考えている会話が耳に入ってきた。間違いなく関西弁だ。

彼らが注文を終え、お水が入ったコップが運ばれてきた。コップを手に取り、一口飲んだおっさんが一言。

「これが福岡の水道水か、うまい!」

……雰囲気、ぶち壊しである。あんな一言、いまどき吉本新喜劇でも言わないだろう。お店の雰囲気に浸っていた私は、一瞬で現実に引き戻された。

その後も店員を呼び出して、

「ねえちゃん、ここタバコ吸える?あかんかったら、店前で吸えるか確認してきてー。」

まあ、喫茶店なのでタバコを吸いたい気持ちはわからなくもないが、お店の雰囲気からして無理だと悟ったのか、すぐに妥協案を出すあたり、やはり関西人。いや、言葉遣いからして間違いなく大阪人だ。それも豊中や箕面の北の方ではない。少なく見積もっても、大阪市より南側の育ちだろう。私も大阪の南のほうで育ったから感覚的にわかる。

声のボリュームも少し大きめで、できればもう少し抑えてほしかったが、仕方ない。太宰府の喫茶店が一瞬にして大阪に染まったような気がした。アウェーなのになぜかホーム感。試合観戦やビジネスではありがたいが、旅行となれば別だ。アウェーを楽しみに来たのだから。

そう思いながら、コーヒーとたまごサンドを美味しくいただき、お店を後にした。

そして2週間後。壱岐島のイベントで出会った熊本の方と、熊本の繁華街で食事をすることになった。せっかくだからと、馬肉が食べられる行きつけのお店に連れて行ってもらった。

知人と店長はもちろん顔なじみ、店員さんも気さくで、とてもアットホームな雰囲気。乾杯のチューハイは、頼んでもいないのにメガジョッキ。これが熊本の洗礼か。

ともあれ、出てくるお酒も料理もどれも美味しく、気分上々↑↑。実は知人と会うのは2回目だったのだが、そうとは思えないくらい話も盛り上がった。

気づけばジョッキを数杯飲み干し、少しずつ酔いが回ってきた。会話の声がちょっと大きくなってきて、知人の話に対し、「なんでやねん!」「それはちゃうやろ!」とツッコんだりしていた。

その後、トイレに行き、少し我に返ったとき、ふと思い出した。

「あれ、あのときのおっさんとさっきの俺、おんなじやん。」

大きな声で大阪弁をしゃべり、九州で必要とされていないツッコミを入れる。どこにいても、ちょっとだけでも“大阪感”を出したがる。なんなら、アウェーのときこそ、いつもの3割増しで“自分の中の大阪”をアピール。なんともがめつい。結局、私も大阪のおっさんなのだ。

2週間前のおっさんに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった私は、トイレから戻った後、少しトーンダウン。知人の計らいで連れてきてもらった2軒目のスナックでは、肩をひそめ、ちびちびと飲んだのは言うまでもない。

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