「放浪刺し子」とは

放浪刺し子とはその名の通り、放浪しながら出会った方に刺し子をしてあげることだ。だが、ここでの放浪刺し子とは、私が特に気に入っている刺し子方法のことである。
放浪は目的地を決めずに歩き始め、「ここに行ったら面白そう」と思ったら、とりあえず足を向けてみる。行った先で知り合った人を介して新たな出会いが生まれ、予想もしなかった楽しいことが起こる。

放浪刺し子も同じだ。図案を決めずにとりあえず針を動かし始める。ひたすらに刺し続けていると、糸と糸が交わる部分が現れ、さらに刺していくうちに、その模様がより形になってくる。まさに人と人が交わるように、糸と糸が交わって新たな柄が生まれるのである。
一方、旅は目標を決めて計画を立ててその通りに進むもの。刺し子で言えば図案通りにきちんと刺すのと同じだ。完成すれば美しく達成感もあり、素敵な思い出になる。
しかし放浪は違う。目的がないから、時には面白くないこともあるし、放浪刺し子も図案がないと大失敗することもある。実際、3日間続けた挙句、仕上がりが気に入らずにすべて糸を抜いてリセットしたこともある。
それでも放浪刺し子はやめられない。その時の気分やノリで針を動かせば、思いがけず良い感じになることがある。どうなるか分からないからこそ、ワクワク感が続くのだ。
図案を使った刺し子ももちろん楽しいが、ゴールが見えているので飽きやすい。その点、放浪刺し子は飽きにくい。だって、どうなるか分からないから。
人生も同じかもしれない。サラリーマンを辞めてふらふらして4年半、まさか針と糸で創作するとは思わなかった。放浪刺し子も同様で、出来上がりは分からないがとりあえず針を動かしてみれば、なんとなく良い感じになる。
針仕事に飽きた方は何も考えずに縦横無尽に針を動かして、布の上を放浪してみてください。きっと良い感じの柄ができるから。

今回はこんなかんじになりました。私は好きですが、あなたはいかがでしょうか?